丸ノ内線と乗換便利に 新宿駅の工事着手へ 京王 “人の流れ”改善 ホーム移動し改札を新設

京王電鉄は、同社の最重要拠点である新宿エリアで計画されている大規模な再開発事業を推進し、並行して新宿駅の改良工事を段階的に進めていくことを決めました。

京王線新宿駅のターミナルビルで、「新宿駅西南口地区開発計画」予定地に含まれている京王百貨店新宿店(2018年3月撮影、Katsumi/TOKYO STUDIO)
京王線新宿駅のターミナルビルで、「新宿駅西南口地区開発計画」予定地に含まれている京王百貨店新宿店(2018年3月撮影、Katsumi/TOKYO STUDIO)

開放的な屋外テラス付き高層ビルも

世界一の乗降客数を誇る圧倒的な交通利便性を背景に繁栄してきた新宿エリアですが、1960年代の副都心計画に基づくまちづくりを最後に、約半世紀にわたって大規模な再編整備が行われていません。乗り換え動線が複雑な上に駅や周辺建物の老朽化が進み、街の魅力という点でも都内の他の拠点と比較して地位が低下してきているのが現状です。

東京都と新宿区は、新宿が抱える課題を解決して国際競争力を高めるため、拠点となる駅や駅ビル、駅前広場を一体的に再編する「新宿グランドターミナル」の方針を2018年3月に公表しました。歩行者ネットワークの充実のため、これまで活用されていなかったJR新宿駅の線路上空に乗り換えデッキを新設するなど大掛かりな構想で、2040年代にかけて官民連携による大型再開発が動き出します。

この構想に基づき、小田急電鉄、東京メトロと東急不動産を主体とする「新宿駅西口地区開発計画」が先行して事業化されました。予定地にある小田急百貨店新宿店本館の解体工事が2022年10月に着手しています。跡地には、同駅周辺では最高層となる地上48階建ての駅ビルが建設され、商業施設、オフィスなどが整備される予定です。

今回、京王が事業化を決めた「新宿駅西南口地区開発計画」は、西口地区の隣接地にJR東日本と共同で計画を進めてきたものです。都市再生特別地区として2022年11月に都市計画決定が告示されました。対象区域は、京王百貨店新宿店やルミネ新宿「ルミネ1」にあたる「北街区」と、甲州街道を挟んで南側の低層ビルが並ぶ「南街区」に分かれており、今年度中に南街区の開発に着手します。

南街区に建てられるのは店舗やオフィス、宿泊施設などが入る地上37階建てのビルで、内部のパブリック空間がビルの外から見える個性的な外観にするとのことです。最高部の高さは225mで、高層部の34階には屋外から四方の眺望を楽しめる開放的なテラスが配置され、新たな観光名所となりそうです。2028年度の完成を予定しており、北街区の開発についてはその後の着手になるとしています。

(京王線新宿駅改良工事、新宿駅西南口地区開発計画の建物イメージと配置図など詳細は下の図表を参照)

【図表で解説】京王線新宿駅改良工事、新宿駅西南口地区開発計画の建物イメージと配置図

「西口地下広場」の混雑を避けて乗換OK

開発計画に合わせて進める新宿駅改良工事では、まず最初の段階として、京王線新宿駅の地下2階ホームを現在よりも北側へ移動する工事に2023年度に着手します。ホーム北側端部には改札が新設され、ホーム階から東京メトロ丸ノ内線への乗り換え動線が整備されます。

現在の新宿駅西口地下広場を経由する乗換経路では、JR線と西新宿超高層ビル地区を結ぶ東西軸と交わり、歩行者同士の交錯を余儀なくされます。グランドターミナルを一体化するにあたって「人の流れを整える」方針が示されており、今回の新通路設置により流動が分散され、乗換時間を短縮できるとのことです。

京王は、南街区開発における総事業費のうち自社負担分と、今回の京王線新宿駅改良工事とを合わせて920億円の事業費を見込んでいます。また、北街区と残りの駅改良工事を含む全体での事業費負担は、詳細は未定ながらも、現時点で3000億円程度を想定しているとのことです。

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